Cyteのニッチな日記

普段考えているあれこれをつらつらと書いていきます。

漂流教室を読んだ

言わずと知れた楳図かずお氏の傑作「漂流教室」(全6巻)を読んだ。

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おどろおどろしい表紙が不安を煽る。

 

ある日突然学校が遠い未来へきれいさっぱり飛んでしまうという衝撃的かつ独創的なあらすじを持つこの漫画、実によく人間の本性を表しているように思えた。

暴動ばかり起こるわ、未来の巨大生物に学校を襲われて子供がバタバタ死ぬわで終始バイオレンスな雰囲気であるが、時たま子供たちが突飛な行動をとるところで笑ってしまう。

例えば、

 

巨大な怪虫に学校を襲われる→以前の戦いの中で、気絶をすれば怪虫に食われても助かることが分かっている→理科室のクロロホルムを使って全校生徒を眠らせようと試みる→クロロホルムが足りなくなる→眠っていない人は何かにしがみついてモノになりきる作戦→なぜか成功、怪虫去っていく

 

イスになりきる主人公の高松翔

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主人公の高松が盲腸になる→医者の息子だからという理由で一人の男の子が執刀をすることになる→ろくな道具もないまま手術開始→なぜか成功 

 

ツッコミどころが非常に多い。しかし、あのような殺伐とした環境下に置かれたら、自分もそう判断しかねないと考えてしまうのが怖いところ。

 

この漫画は多分ホラーSFというようなジャンルに分けられるのだが、今まで見てきた一般的なホラー作品とは違った恐怖を感じた。というのもこの作品には幽霊が出てこない、出てくるのは超常的な生物やミイラだけで心霊とは少し違う。では一体何が怖いのかというと、それは現実性(リアリティー)であると私は考える。物語の背景設定は全くの非現実であり、私たちの生活と物語の間には大きな乖離がある。しかし、力を持った大人が力の無い子供を操る場面や、お互い助け合わないといけないのにも関わらず私情や一部の人の我儘により仲間割れが起こり犠牲者が出る場面などは正に私たちが住む現代社会で実際に起こっている問題の縮図である。つまりこの漫画は、SFという何でもありの世界を使って現代社会への警鐘を鳴らしたということで評価されているのだろう。作品中でも述べられたように、大和小学校=国であると考えることで更にこの作品を理解できると思う。話の終わり方も、迷走する現代に向けた一つの打開策であるという風に思える。